スイスフランショックから見えるFXの致命的欠陥

スイスフランショック1 FX手法

世界の金融市場が大混乱に陥った「スイスフランショック」はご存知でしょうか? 筆者は当時、スイスフラン関連はトレードしていなかったので、全く被害はありませんでした。記憶にも無い位です。でもその時の状況を知っておくと今後のリスク管理にもなるので、再確認してみたいと思います。

スイス国立銀行(中央銀行、SNB)は、2015年1月15日の日本時間午後6時35分頃、2011年9月から約3年4ヶ月間、設定してきたスイスフランの対ユーロ上限値 1.2を突然「撤廃する」と発表

1ユーロ=1.20スイスフランを上限としていたレートが、一気に1ユーロ=0.85フランまで、急落、変動に対処できなかった多くの投資家やFX業者が莫大な不利益を被りました。

なぜスイスフランショックは起きた?

スイスフラン通貨の特徴は?

スイスフランは、日本円と同じく非常に低金利です。そのため、低金利の通貨を借入れ、高金利の通貨で運用する「キャリートレード」に用いられます。

「永久中立国」を宣言するスイスは(最近は、本当にそうかな?とも思いますが)、冷戦の時代においても、西側・東側のどちらの勢力にも属しませんでした。そのため、資本の避難先としての信頼性が確立されていて、東西対立の風潮が高まった際には、スイスフランへ資金が流れ込む傾向があります。

スイスは小国のため、国内総生産(GDP)の経済規模は大きくありません。しかし、上記で挙げた「資金の避難先」としての安全性が広く知られた結果、世界の富裕層の資産がスイスに集まるようになりました。また、富裕層を対象とした、顧客との信頼関係を構築して資産を守る「プライベートバンキング」と呼ばれる仕組みも確立されています。

スイスフランは、ひとえに「安全性」にあると言えます。ただし、このような安全性は、2011年の欧州債務危機を受け実施されていた、スイス政府による巨額の為替介入によって支えられていたのです。昨今の日本政府の為替介入とはイメージがちょっと違います。

非常な為替介入

為替介入とは
政府が資金を投じて自国の通貨を売買し、為替市場を操作すること。政府による為替への介入は、市中銀行の為替ディーラーなどを通じ秘密裡に行われます。しかし、為替操作が始まるとレートが急激に変動するため、投資家たちも「介入が行われた」と察知すること自体は可能です。また、介入を行う際は、事前に政府が要人の発言などを通し、市場にシグナルを出す場合もあります。

スイスフランショックも事前に、市場へ介入のシグナルを発していた様です。ちょっと納得のいかないシグナルですが… 上限撤廃が発表されるほんの数日前、この「介入シグナル」とも受け取れる情報がメディアに流れました。

具体的には、スイス国立銀行(中央銀行、SNB)のダンティーヌ副総裁が、テレビ番組のインタビューで、「1ヶ月弱前にあらゆる角度から状況を再評価したが、スイスフランの上限は今後も金融政策の基礎であるべきと確信している」と発言しました。

やることと実際には真逆の発言?? 今回の対ユーロ上限撤廃措置については、国際通貨基金(IMF)にすら事前の通告がなかったほどの急な決定だったとのこと。

この上限撤廃の背景には近年の急激なユーロ安傾向に対するSNBの懸念がありました。1ユーロ=1.2スイスフランの均衡を維持するための資金投入について、自国の通貨高が進む現状を鑑み、続行することは不可能であると判断せざるを得なかったのでしょう。

もし、SNB副総裁による上記のような発言がなければ、「1.2スイスフラン固定」を信じて損害を被る投資家の数は、大きく減少していた筈です。XMは不穏な動きに気付いていたのだから凄い(後程詳述)。

ジョルダンSNB総裁は「この様な金融政策の解除を決定した際には、市場の不意を突く必要がある」と話しており、ダンティーヌ副総裁の事前発言も含め、確信犯的に計画を立てていたことを示唆しました。

「安定通貨」の取引においても、絶対的な安全性は保障されないことが分かります。信用すべき国家の筈が、ハゲタカにしか見えない。

スイスフラン大暴落、FX業者、トレーダーへの波及

ユーロ/スイスフラン大暴落の影響で、大きく儲けることが出来たトレーダーもいましたが、大きな損失を被ったトレーダーや証券会社が多数、存在します。日本でも業務を行っていた英大手FX業者アルパリが、15日のスイスフラン上限撤廃直後の大変動において大損失を出し、破綻することになりました。

ユーロ、スイスフラン
ユーロ/スイスフラン 1分足
米ドル、スイスフラン
米ドル/スイスフラン 1分足

アルパリジャパンの破産

この変動のために、スイスフランをショートしていた個人や法人投資家は大損失を被ることになりました。中には当然ストップ注文を入れていた者もいましたが、ストップが正常に機能せず損失が膨らんでしまったケースも多々あったと思われます。

スイスフラン、円
スイスフラン/円 1分足

スイスフランの大変動によって生まれた膨大な損失

FX業者がトレーダーの代わりに一旦、肩代わり
顧客の取引の損益は一旦、業者が取引相手に支払う

その後、顧客と業者との間で決済する仕組み

2004年に設立された(前身の企業は1998年からロシアに存在)イギリスのFX大手業者・アルパリが、15日の上限撤廃直後の損失があまりにも莫大なために、顧客からの回収を検討する以前の段階で既に破綻を宣言。

アルパリは、2004年から業務を開始し破綻前はイギリスの他に日本、ドイツ、アメリカなど主要国20ヶ国以上に進出する迄に業務を拡大していました。

日本でもアルパリジャパン(国内FX)として2011年からFX業務を行ってきましたが、今回イギリスの本社が破綻したため、アルパリジャパンもFX事業が完全終了。

アルパリジャパンは16日の時点で既に、サイト上で「顧客の現ポジション全てを強制決済する」と発表。また新規ポジションの保有や、入金も受付不可に。

これは明らかに早期の業務終了を目指している措置。また関東財務局はアルパリジャパンに対して、資産の国内保有命令などを出して、日本の投資家の保護に動いた。

ドル、円
ドル/円 1分足

トレーダーの追証、借金

2015年1月15日の日本時間午後6時30分からの4通貨のチャートを表示していますが、ドル円に関しては全く無風です。

日本人にとってスイスフランは、それ程なじみのある通貨では無いため、金融先物取引業協会が発表している店頭FX会社のデータを見ると、2014年12月の取引金額の中で、スイスフラン絡みの通貨ペアが占める割合はわずか0.2%。それを考えれば、日本人を主要顧客とする国内FX会社の損失は、そう大きなものではありません。

とは言え、多数のトレーダーに史上まれに見る追証が発生しました。もう一度、スイスフランのチャートを。

ユーロ、スイスフラン

1.2は割らないとアナウンスされていたので、それを信用していたトレーダーは下がったら買い、下がったら買いを繰り返していました。ところが、為替介入撤廃で、一気に下落。

もちろん、多くのトレーダーは損切りを入れていました。ところが損切値で決済されなかった。1.2直下に損切りを入れていて命拾いできたトレーダーもいましたが、その後、全世界的に取引が一時ストップ。要は損切りの決済も行えなくなった。

上記の1分足チャートはローソク足が表示されていますが、実際に売買取引が再開されたのは数十分後です。業者によってだいぶ違うようで、5~50分後に取引再開。

各FX会社によって違っていた様なので、あくまでも想定の話になってしまいますが、1.20スイスフランから100pips下に損切りがあったとして… 実際には、損切りが指定したレートで約定されず取引再開後のレートで約定した様で、そのレートが1.00スイスフラン台だとすると、1,900pipsほど滑って約定することになります。米ドル/円だと19円幅のスリップに…

1Lotをロング(買い)してた場合
100pips逆行して損切りとした場合 → -10万円
1,900pips下で損切り決済されると → -190万円

逆にショート(売り)していた場合は+190万円ですが、とても少ないケースでしょう。

想定よりも1,000pips以上離れて約定したトレーダーが多く、多額の追証を払う羽目になりました。払えなければ、借金として返済しなければなりません。

本来、FXでは強制ロスカットの仕組みがあるため、基本的に追証(借金)が発生することはありません。しかし、今回のように為替レートが急変した時には、口座に入金していた証拠金額以上の損失が発生し、FX会社に対する負債が発生することがあります。

損失発生額発生件数一人当たり
スイスフランショック(2015.1.15)約33億円1,229件約268,000円
東日本大震災(2011.3.11)約16.4億円12,216件約135,000円
ギリシャショック(2010.5.)約4.8億円6,087件約79,000円
日本国内の統計

国内FXは、これが怖い。海外FXは大多数の証券会社がゼロカットシステムを導入しているので、追証(借金)は発生しません。口座残高が0円になってしまうだけで済みます。

FXの致命的欠陥、追証を回避するには?

海外FXは、大多数が追証無し、ゼロカットシステムを採用しています。XM(XMtrading)はスイスフランショックが起きる前に、レバレッジ規制を行っていたり危機管理もしっかりしていたので破産せず、もちろん追証請求も行いませんでした。

ゼロカットシステムの詳細はこちらの記事が分かり易いです↓

追証無しを撤廃⁉

追証なし業者を求めて海外のFX業者を利用する人は多いと思いますが、FXDDはこのスイスフランショックでいきなり追証なしを撤廃!
「追証なしはサービスの一環で今回のような暴騰を想定したものではないから撤廃」
やっぱり今のは無しで宜しくね… がまかり通る業者と言うことになります。

損失発生額発生件数一人当たり
スイスフランショック(2015.1.15)約33億円1,229件約268,000円
東日本大震災(2011.3.11)約16.4億円12,216件約135,000円
ギリシャショック(2010.5.)約4.8億円6,087件約79,000円
日本国内の統計

上記表は国内FXのみですが、スイスフランショックは他と比べて莫大な損失額です。この様な時に、本性? が現れますね。気を付けなければいけません。

日本国内のFX業者は、追証なしの業者が無い

日本国内のFX業者は、ゼロカットシステムを採用していません。もしロスカットが正常に発動しないと、証拠金残高以上の損失が発生してしまい、必ず追証が発生します。

「追証なし」はトレード環境においてかなり重要なポイントです。海外のFX会社であれば万が一追証が発生しても取り立ては困難でしょうが、日本国内の証券会社で追証を食らってしまったら即、銀行口座が差し押さえなんてことにもなりそうです。

リスク管理の観点から…

この記事ではスイスフランショックを取り上げ深堀しました。筆者はこの様なリスクも考えると、海外FX業者が安全と考え、XM で長年トレードをしています。スイスフランショック時にもゼロカットを執行してトレーダーを守っています。

スイスフランショック XMの対応
XMtradingサイトから引用

マイナス口座残高が発生した全てのお客様は、当社の評判と強みへのお約束を果たす為に、マイナス残高が起こりうる他のケース同様に、マイナス残高は既にリセットされています。

トレーダーに追証(借金)を請求する国内FX業者とゼロカットシステムでトレーダーを守る海外FX業者。正直、雲泥の差があります。勝負になりません。海外FX業者=詐欺というレッテルを貼りたくなるのも分かる気がします。

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